2016年05月11日

ひとときの邂逅

 うちのこ小話。アリアンロッドのエクスマキナ、サマさんのお話。
 また少し手直しした再掲作品です。

 

 さらさらと零れ落ちていく銀色の砂。
 それを溜めようと手を伸ばしても砂は指の隙間から落ちていく。手の平に残された砂はほんの一握り。
 無限に降ってくるはずの砂はどこへ消えていくのだろう。落ちた先であるはずの床に砂はない。
 手を伸ばす。零れ落ちる。
 また手を伸ばす。それでも砂は零れ落ちる。
 どれほど掴もうとしても欠片ほども留まらない。
 ならばと彼は、何も考えないことにした。
 零れ落ちるのなら落ちればいい。それを気にしなければいい。
 気にしなければ、いずれは砂が流れていくことすら当たり前になるだろう。
 砂が消えても苦しくない。それが零れ落ちようとも痛みはない。
 気にしない。気にしない。
 ただ少し、虚しさが残るだけ。
 それもまた、気にしない――。


「サマ? お前、サマじゃないか!」
「んー?」
 お祭りがあると聞いて何気なく足を運んだ小さな町。
 その大通りで名前を呼ばれ、ゆっくりと振り返る。見れば、ドゥアン族の男が腕を振っていた。2mを超える背丈があれば人混みの中でもよく見える。
 人の波をかきわけやってきた男は、額から小さな角が生えているそのいかつい顔をほころばせた。
「やっぱりサマだ。久しぶりだな、元気にしてたか?」
 懐かしそうにしながら質問を投げかけてくる男。だが、その男についての情報がサマのメモリの中にはなかった。
 たぶん、以前一緒に冒険した仲間なのだろうと思う。しかし記憶にはない。
 サマはいつも浮かべているへらっとした笑顔を引っ込めて男を見上げていた。相も変わらず眠そうな顔ではあったが。
 やがて男も反応がおかしいことに気がついたらしく、訝るように眉をひそめた。
「どうした? まさか俺のことを忘れたなんて言うなよ?」
「あー、うん悪いなー。覚えてないー」
 取り繕いもせず答えると男はがっくりと肩を落とした。
「寝ぼけたような奴だとは思っていたが、まさか仲間だった相手まで忘れるような奴だったとは思わなかったぞ。
ダルムだよダルム。それでもわからないか?」
「んー、覚えてないー」
 記憶の中を探して回るのは無駄だろうとわかっていた。サマは大して間を開けずに答えを返す。
 ダルムと名乗った男はひどく落胆した様子を見せたが、すぐに気を取り直して笑った。
「まぁ、お前も色々あったんだろ。俺もあったしな。5年ぶりだなサマ。変わりはないか?」
 "5年"、かー。
 サマは胸中で静かに呟いた。


 - ひとときの邂逅 -


 祭りで賑わう大通りを並んで歩く。立ち並ぶ屋台からは客を引く声が次々と上がっていた。大道芸で小銭を稼ぐ者の姿もある。やはり目を引く芸は身のこなしが軽いフィルボルやヴァーナが多いようだ。
 サマよりも一回り体格のいい有角族のダルムは、隣を歩く青年にあきれた様子で言葉を投げかけた。
「相変わらずよく食うなぁ」
「そうかー?」
 首を傾げるサマの手にはタコヤキが握られていた。この数分の間に手の中のものはりんご飴、イカ焼き、かき氷と目まぐるしく姿を変えている。
 またすぐにおいしそうな匂いにつられたのか横を向いてのんきな声をあげた。
「おー、あのヤキソバもうまそうだなー。ダルムも食うかー?」
「俺はいいよ」
 苦笑いを浮かべながらダルムは首を振った。話しかけたヤキソバの屋台の男は妙に愛想が良かった。タコヤキが今度はヤキソバに化けた。
 一通り食べて満足したのか、ようやくサマの手が空いた。それまで食べた物の数々を思い出し、ダルムはしげしげと言った。
「エクスマキナって言ったか。それはみんなお前みたいに見かけによらず大食いな種族なのか?」
「んー、そうでもないと思うぞー。腹が減るわけじゃないしなー」
 エクスマキナは機械の体を持つ種族。本来は遥か西のアルディオン大陸に住まう種族で、その外見は人間そっくりのものから動物タイプのもの、はては建造物までと多岐にわたる。サマは人間とほぼ同じ容姿をしたタイプに当たる。
 機械であるから一般的に人が口にするような食事はエクスマキナには不要なのである。
 走ってきた子どもとぶつからないように避けたダルムは不思議そうな顔をした。
「腹が減らないのに食べるのか?」
「おー、うまい物はうまいからなー」
「そりゃそうだ」
 明るい笑い声が祭りを彩った。
 ひとしきり笑ったダルムは再び口を開いた。
「今は一人で旅をしているのか?」
「おー。たまーに旅の一座に入ったりするけど、だいたい一人だなー」
「そうなのか。俺は今ギルドに所属しているんだ」
「んー、ギルドってなんだー?」
「なんだ、ギルドを知らないのか?」
 首を傾げるサマにダルムは目を丸くした。サマはまだ首をひねったままだ。
「知らないなー」
「そういえば、お前達と旅した時はあいつが嫌がったから組んでなかったな。
ギルドっていうのは神殿から祝福を受けた集まりで色んな恩恵を受けられるんだ。あると便利だぞ」
「へー。オレの大陸にはそんなのなかったなー」
「……ああ、そういえば言っていたな。今思い出した。
というか、ギルドのことはパーティーを組んでいた時にも教えたはずだぞ。間違いない」
「そうだったかー?」
 青年の首がかくんと傾く。とことん忘れっぽい奴だな、とダルムはつぶやいた。
 また屋台の食べ物に目を奪われている友人にまだ食べ足りないのかとあきれていたダルムは思いついたように言った。
「そうだ。せっかくだからお前もうちのギルドに入らないか?
今のギルドの奴らも、少しクセは強いがなかなかいい連中だぞ」
 ダルムに視線を戻したサマは首をひねった。
「んー。いやー、やめとくー。好きなところをふらふら行けなくなりそうだからなー」
「……まぁ、否定はしないな」
 率直な理由にダルムは苦笑した。
「それにしても、こうも立て続けにあの時のメンバーに会うとはなぁ。
この間はレオンとミリアリアにも会ったんだ。お前は会わなかったか?」
「んー?」
「レオンは随分大きくなってたぞ。やっぱりあの年頃のヒューリンは成長が早いな。
ミリアリアは……まだ泣き虫が直っていないみたいだった。相変わらずレオンの後をついて回っていて――」
 楽しそうに語るダルム。しかし――
「レオンにミリアリアー?」
 初めて聞く名を反芻する。サマの言い方はまさにそんな風であった。
 ダルムの足が止まった。一歩遅れてサマも止まる。
 振り返るとダルムが悲しそうにサマを見ていた。濃い鳶色の瞳で、戸惑うように。
「本当に……俺達のパーティーのこと、何も覚えていないのか?」
 それは何かに縋るような言葉だった。嘘なら嘘と言って欲しいと、そう言わんばかりの。
 だが嘘ではない。
 覚えていない。顔や名前どころか、そのパーティーが何人だったのかすらわからない。
 名前を聞いたり思い出を語られたりしたところでわかるはずがないのだ。零れ落ちた砂はもうとっくに消えている。床を探したところでどこにも落ちてはいない。
 しかし、では何と言えばいいのか。
 これまでの反応からして、彼に呪いのことは教えていなかったのだろう。だからといって何も覚えていないとはっきり告げることは躊躇われた。
 彼が心の優しい人物だということは短いやりとりの中で十分わかっていたから。全て忘れたと言えば傷つくだろうから。
「……あー……」
 サマは返す言葉に困っていた。視線が宙を泳ぐ。
 しかしその素振りからおおよその回答を読み取ったらしく、ダルムの表情は目に見えて翳った。
「そう……か。1年近く一緒に冒険したのにな」
 非難めいた色はなかった。ただ、寂しそうにダルムはつぶやいていた。
 二人の間に沈黙が落ちる。そんな二人を余所に祭りはどんどん賑わいを増していた。
 何か催しものが始まるらしい。ギャラリーを集める声が飛び交い、不規則に動いていた人の波が方向性を持ち始めた。
 その波の中でも岩のように動かない二人。人々は立ち尽くす二人を避けて各々の目的地へと歩いていく。
 ダルムが初めて険しい表情を見せた。クセのある淡い金髪の青年を鋭く見据えて問い詰める。
「どうしてあの時急に抜けると言い出したんだ? 俺たちのことを覚えていないことと何か関係があるんじゃないのか?」
「…………」
 眠そうな銀白色の瞳はダルムを見ない。それがダルムを苛立たせた。
「何か言え、サマ。何故答えない!」
「ひぁっ!?」
 上がった悲鳴はサマのものではなく。横を通り抜けようとしたヴァーナ族の少女のものだった。突然の大声に驚いたらしく、ぴょこりと生えた兎の耳が大きく震えた。
 ぷるぷると震えながらダルムを見上げる少女。目が合うとさらにびくりと震え、そして――
「ひっ……えぅ……うええぇぇぇーん!」
「あ……」
 火がついたように泣き出した。ダルムはしどろもどろするばかりでどうすればいいかわからないようだ。通りすがりの人々からは好奇や非難の視線が集中しつつあった。
 サマは眠そうな顔でダルムを見上げた。
「ダルムー、どうするんだー?」
「ど、どうすると言われてもだな。俺は、こういうのは苦手なんだ」
 泣き止ませようとするがますます泣き声が大きくなった。ダルムは困り果ててわたわたと意味のない動きをするばかりだ。大きな男がうろたえている光景は傍目には滑稽なことだろう。
「んー」
 サマが少女の前に進み出た。少女は再びびくりと身を震わせると怯えるようにサマを見上げる。
 しゃがみこむと目線を少女に合わせ、その小さい頭をなでながら穏やかに語りかける。
「ごめんなー、怖かったよなー」
「ひぅ……ぐすっ」
「んー。そうだー、リンゴ食べるかー? うまいぞー」
 鞄をごそごそと探ると赤いリンゴが出てきた。少女の視線が目の前のりんごに注がれる。
 じーっとりんごを見ていた少女が涙まじりの声でつぶやいた。
「りんご……好き……」
「おーそうかー。オレも好きだぞー。うまいよなー」
 のほほんと笑うサマ。つられて少女も笑った。
 りんごをもらった少女は服の裾でぐしぐしと涙を拭き、ちょこんと頭を下げた。
「ありがと」
「おー、どういたしましてー」
 二人で笑う。少女の目にもう涙はなかった。
「シーナ、シーナったら、どこに行ったの!? すみません、うちの子見ませんでしたか!? 私と同じ兎族の、小さい女の子なんですけど――」
 娘を探す母親のものらしき声が祭りの喧騒を縫ってかすかに聞こえる。ダルムとサマは顔を思わず見合わせた。
「んー……なーダルムー」
「なんだ?」
「なーんとなく、この子がシーナなんじゃないかと思うんだけどなー」
「俺もそんな気がする」
 ダルムがしごく真面目な顔で頷く。
 ふと、くいくいと服を引っ張られる感覚にサマが視線を下ろすと、少女の赤い瞳がサマを見ていた。
「お兄ちゃん、どうしてシィのお名前しってるの?」
 不思議そうに少女が首を傾げる。
 再び顔を見合わせた男二人は、人ごみをかき分けて声のした方へと走っていった。きょとんとした顔の少女をサマの背に乗せて。


「ママ!」
「あぁ、シーナ! どこに行っていたの、心配したんだから!」
 少女は駆け出すと、両手を広げて迎える母親の胸に飛び込んだ。
 先ほどまでの大通りからはだいぶ離れた場所まで来ていた。祭りの喧騒すら今は少し遠い。
 ひしと抱き合うヴァーナの母娘。その後方ではドゥアンとエクスマキナの二人組がちょっとぐったりとしていた。
「な、なんで……わざわざ逃げるような方向に探しに行くんだ……」
「あの人ごみはさすがにちょーっと疲れたなー」
「ご、ごめんなさい。まさか私を呼び止めていらっしゃるとは思わなくて」
 女性は申し訳なさそうに何度も頭を下げた。シーナは安心したら眠くなってきたのかうとうととした様子で母の腕に抱かれていた。
 我が子を腕に抱いたまま女性は微笑んだ。
「本当にありがとうございました。このご恩は忘れませんわ。またいつかお会いした時にはきっと恩返しさせていただきます」
「んー。まー、オレが勝手にやってることだから気にしなくていいぞー」
 サマは軽く笑って答えた。一方のダルムは子どもを泣かせた張本人なだけに少し居心地が悪そうだった。
 手を振って母娘と別れる。しっかり手を繋いだシーナとその母親は、祭りで活気付く大通りへと消えていった。
「無事に会えてよかったなー」
 のほほんと言うサマ。しかし返事はなかった。
 隣の男を見ると、何やら複雑な表情をしていた。それを見たサマは首を傾げる。
「ダルム、どうしたー?」
「いや……」
 しばし視線がさ迷った後、その行き先は自分の足元に落ち着いたようだ。
「……すまん」
「んー?」
 自己嫌悪するように肩を落とすダルム。サマは何のことだかわからずに再び首を傾げた。
 顔を上げ、遠目に見える賑わいを眺めながらダルムは言った。
「さて、どうする? またあそこに戻るか?」
「んー。屋台のものはもうだいたい食べたしなー」
「お前は食べることしかないのか?」
 ダルムが呆れたように言いながら笑った。
 少し前までの緊迫した雰囲気など嘘のように、二人の間の空気は穏やかだった。
 空砲の音が響く。何かのイベントが始まったのだろうか。しかし離れた場所での喧騒はどこか空々しいものがある。
 それをきっかけにしたかのようにサマは切り出した。
「んー。オレはそろそろ行くなー」
 言いながら、準備体操でもするように軽く体を伸ばす。ダルムは引きとめようと口を開きかけ、そして止めた。代わりに出たのは再会を望む言葉。
「またそのうち会えるといいな」
「んー、そうだなー」
 自分の荷物の中身を軽くチェックしつつサマは相槌を打つ。ダルムは鞄の中にりんごや野菜スティックのご一行を見た気がした。
「もう今度は忘れるなよ? 次会った時も忘れていたらブン殴ってでも思い出させるからな」
 冗談めかして言うダルム。一通り点検を終えたのか、サマは鞄の口を閉じながら答えた。
「んー、どうだろうなー?」
「おいおい、勘弁してくれよ」
 冗談で返したと思っているのだろう。ダルムの口調は軽かった。
 一緒に冒険して、再会した相手をまた忘れてしまうなど普通はありえない。
 そう、普通は。
 しかしサマはその『普通』が当てはまる身ではなかった。
 一年以内にまた会わなければ忘れてしまう。一年経てば記憶がすっぱり消えてなくなる。そういう呪いが自分にはかかっている。
 それを伝えたら、目の前の人の良さそうな男はどう反応するのだろう。
 今まで言わなかったことを怒るのか、呪いを解く方法を一緒に探そうと言い出すのか……。
 思ったが、口にすることはなかった。その代わりに口を出たのは短い一言。
「それじゃーなー」
「おう、達者でな」
 手を振って、軽いノリで別れる。
 もしまた今度どこかの町で彼を見かけても、サマは気付かずに通り過ぎるだろう。それが、今日から1年以上経った時だったなら。


 一年。
 一年、彼らと旅をしたという。
 短くはない時間だ。その間に多くのことがあっただろう。喧嘩をしたかもしれないし、人々に感謝されたのかもしれない。
 彼らはそれらの事柄を記憶し、共有し、懐かしむことができる。
 しかし同じことがサマにはできない。忘却の彼方にいってしまった事柄はもはや初めからなかったことと同じこと。
 たぶん。いや、過去の自分が何を思ったかすら定かではないが。
 それでもおそらく、一年も共にいたから自分は彼らと別れたのだと思う。
 一年は一つの節目の時。最初のダンジョンの話でもして、あの時はああだったと談笑でもしたことだろう。
 でも自分はその輪に加われない。仲間達が積み重ねていく思い出を、自分は失っていくばかり。長い歳月を共にすればそのギャップは広がる一方だ。
 だから去ったのだろう。呪いのことは告げずに。一人で気ままな旅がしたくなったとでも言って。
 この手に残るのは戦いの技術ばかり。倒した相手すら覚えていないが、体にしみついた技が今まで屍の山を築いてきたことだけを物語る。
 虚しいことだ。でも、気にしなければいい。

 気にしない。
 何も気にしない。
 目の前に出てきたものをなんとかする。敵なら倒すし困っている人なら助ける。
 後悔すらできなくなるから、後悔などしないですむように。目の前のものには自分ができることをしていく。
 それだけ。その先は考えない。考えたところでいずれ消えてしまうから。
 "自分が"苦しいことは気にしない。苦しかったことすら忘れられるから。
 でも、"誰かが"苦しいことは避けられるように頑張る。自分はそれすらなかったことにできてしまうから。
 忘れて、何もなかったことにできてしまう自分を許したくないから。
 何があったか覚えていられないからこそ、自分は自分にできることをやってきたと胸を張って言えるように頑張るだけ。
 気にしない。
 気にしなければ怖くない。
 考えるのは止めればいい。元々得意ではないのだし。
 面白いものを探してふらふらと旅をする。ついでに呪いを解く方法が見つかればラッキーだ。その程度に考える。


 祭り客が金を落とすことを期待しているのか、宿屋の代金はずい分高かった。それならもういいやとサマは町を出た。野宿は慣れている。
 街道を歩いていると、ふと首元に何かがしがみついた。
「んー、プルトー。どうしたー?」
 名を呼びながら使い魔の小猿をなでる。いつもは反抗的な小猿がそっと頭をすり寄せた。
 長く旅の友をしてきたはずの友だ。思い出などほとんど残ってはいないが。旅を始めてわりとすぐに契約したように思うがもはや定かではない。
「まーお前はずっと一緒だからお前のことは忘れないし、お前も頭いいんだからオレを忘れないよなー」
 にへーっと笑いながらプルトの頭をわしわしと撫でる。プルトが嫌がる素振りを見せてもお構いなしである。
 怒ったプルトががぶりとサマの指を噛んだ。けっこう本気だ。しかし指先からオイルをだらだら流しながらサマはのん気に笑っていた。
「はははー、じゃれてるんだなー」
 それがじゃれつきとは違うことに主が気付く日が来るかどうかは疑わしい。ある意味幸せな勘違いだ。
 まだ腹の虫が収まらないのか小猿はしばらくきーきーわめいていたが、やがて主人の鞄の中に潜り込んだ。不貞寝を始めたのかもしれない。
 サマはそれを気にした様子もなく、のほほんと独り言をもらした。
「んー、ギル……なんだったかなー?」
 ダルムから聞いた話を思い出そうとしたが、あまりその気になって聞いていなかったせいか首をひねっても名前が出てこない。
「まーいいかー。一人じゃどうしようもないしなー」
 考えてもわからないことはすぐあきらめる。よくいえば切り替えが早い。
 街道を歩いていると分かれ道に突き当たった。分岐点には木製の案内板が立っている。どうやら北に曲がるか東に直進するか選べということらしい。
 サマはほんの少しだけ考えると、のんびりとつぶやいた。
「今度はそうだなー。北でも目指してみるかー」
 進行方向を東から北へと変更する。特に意味はない。ただなんとなくの選択。


 彼が一人のエルダナーンと出会い、行動を共にするようになるのはこれより少し後のこと。




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posted by のみち at 22:10| Comment(0) | アリアンロッド ヘラルド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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